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2008.02.06 Wednesday  | - | - | - | 

スティーヴン・キャラハン『大西洋漂流76日間』知識と技術と心と不思議

昨年暮れに読んだ本。『エンデュアランス号漂流』『恐るべき空白』に続く、遭難記もの。

大西洋漂流76日間
スティーヴン・キャラハン著
/ 長辻 象平訳
早川書房 (1999.5)
ISBN : 4150502307
価格 : ¥756
通常2-3日以内に発送します。


■内容

著者のスティーヴン・キャラハンは、1952年生まれのアメリカ人。少年の頃からヨットの魅力に取り付かれ、ヨット設計を仕事とするほどのヨット狂となる。

小型ヨットでの大西洋横断を目標においたキャラハンは、自分用に設計した小型艇ナポレオン・ソロ号を建造。1981年の冬、ソロ号を駆って念願の大西洋横断の航海に出発する。往路は友人との二人旅だったが、復路は、当人にとって初めての大西洋単独横断となった。ポルトガルのリスボン、カナリヤ諸島で年を越したキャラハンは、カリブ海の島々を目指して単独航海を開始。

荒れ模様ながら順調に航海を続けた出航一週間後の2月4日の夜、突然の衝撃とともにヨット内に浸水。救命ボートに自家製サヴァイバル・キットを積み込むことはできたものの、そこでソロ号とわかれを告げなければならなくなった。

遭難地点は、最寄りの陸地からも主要航路からも700Km以上離れた海のど真ん中。風と海流に任せて漂流すれば、目的地であるカリブ海に流れ着くというものの、そこまでは3,000Km以上の距離がある。食料も飲料水もほとんど持たないまま、当人の言う「海の砂漠」のただ中に投げ出されたキャラハンだったが、あきらめること無く漂流を開始。サヴァイバル・キット内の原始的な飲料水製造機でわずかづつ水を作り、水中銃のモリを使って救命ボートに集まるシイラを獲る。さらに、次第に崩壊する救命ボートをなんとか修理。こうした作業を倦むことなく繰り返しつつ、忍び寄るパニックや絶望と戦いながら生き続けたキャラハンは、76日間の漂流後、漂い付いたカリブ海域で、地元の漁師に拾われ、無事生還する。

本書は、このキャラハンの漂流全76日間の一日一日を、本人が日記形式で書き記したもの。キャラハンが抱いた様々な考えはもちろん、漂流中に行った作業や、彼が工夫を凝らした仕掛け類についても図解入りで詳しく説明しており、一種のサヴァイバル・マニュアルとしても読める。
■感想

著者のスティーヴン・キャラハンは、名前からも想像できる通りのアイルランド系。エンデュアランス号のシャクルトン、『大いなる空白』の探検隊長バークに続き、またしても、ということなのだが、やっぱりアイランド人って、冒険(しかもヤバいやつ)と縁の深い独特の何かがあるのだろうか。

キャラハンが76日間もの漂流を経て生還できたことについては、いくつかの理由が考えられる。

素人目に見て大きいのは、やはり十分な知識と技術を持っていたこと。ヨットに親しみ、単独航海での大洋横断を夢にしたくらいなので、海でのサヴァイバルというものにも、事前にかなりの興味を抱いて調べていたらしい。その結果として、遭難に対する備えもある程度整っていた。

たとえば、彼が「ラバー・ダッキー」と名付けて、その身を託した救命ボート。ガスで膨らむ強化ゴム製のものだが、これが6人乗りのもの。キャラハンがこのサイズを選んだのは、4人乗りを2人で使った経験の辛さからとのこと。漂流が進むと、この6人乗りを1人で使う状態ですら、身体にかなりの負担がかかったらしいことが見受けられる。

また、自家製サヴァイバル・キットに簡易な飲料水製造機を複数個入れてあったことも、生存には必須の要素だったようだ。この飲料水製造機、海水をわずかづつ太陽熱で蒸溜するもので、扱いの難しさが繰り返し記されているが、こういうものがなければ、やはり長期間の漂流は不可能だっただろう。

こうした知識と技術が無ければ、生存が物理的に不可能になってしまうわけだが、それよりさらに重要なのは心の力。心が折れてしまっては、知識も技術も活かしようがない。生き続けるためには、水・食物の確保からボートの修理まで常に動き続ける必要があって、パニックを起こしても鬱状態に沈んでいても生存はおぼつかない。このキャラハンの漂流記でも、漂流開始直後から、何度も、パニックや自暴自棄状態に陥りかけたことが記されているが、破滅の一歩手前で踏みとどまることができた強い精神力を持っていたことが、生還の最大の鍵なのだろう。

さらに、この漂流記を読むと、キャラハンの生還には神秘的な要素も働いてように思わされる部分もある。

キャラハンは、漂流中の食料として、救命ボートの周囲に集まる魚、特にシイラを獲って糊口をしのいだ。まともな漁具を持たない漂流者がシイラのような大型の魚を続けて手に入れることができたというのは不思議な気もする。しかし、漂流物に藻類や貝類が付着し、それを食べる小魚、そしてより大型の魚が集まり一種の生態系のようなものが構成される、というのは普通に見られることらしく、キャラハンの手の届く範囲にシイラが集まったことは不自然なことではないようだ。

孤独感に苛まれ、絶望に捕われそうになるキャラハンが、いつしか、ボートのまわりに集まるシイラたちに親近感を抱いたというのも、理解できる話。

ただ、最後にキャラハンがカリブの漁師に救われたのは、ボートのまわりのシイラを狙った海鳥を見て獲物がいると考えた漁師達が、普段より遠出をしてきたためだ、ということにまでなると、出来過ぎというかなんというか。まあ、そういう巡り合わせなんだ、と言えばそれまでなのだが、ちょっと不思議な気がする。日本の昔だったら、シイラ神社とかできちゃうような話かもしれない。
2007.01.09 Tuesday 00:44 | comments(1) | trackbacks(0) | ノンフィクション | 

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2008.02.06 Wednesday 00:44 | - | - | - | 

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いぬどし (2010/07/08 11:45 PM)
久々に読みましたが、最後のカタルシスがなんともタマラナカッタです。漂流ものは良く読みますが、この76日間は圧倒的な記録だと思います・・・もう超人としか・・・
上記の本は皆読んでますが「恐るべき空白」はホント読み応えありますね。。。オーストラリア旅行中に読んだ事があるので、臨場感たっぷりでした(^^;)